関西刑法学の課題

佐伯千仭先生の死去は、関西刑法学にとって大きなニュースであった。
これをきっかけに、関西刑法学の課題について考えたい。

結論から言えば、関西刑法学は重大な危機を迎えていると「私は」思っている。
それは理論がおかしいからではない。理論の当否は私には正直分からない。
それでは、なぜ危機かと言うと、実務家、そして未来の実務家である新司法試験受験生・法科大学院生が、関西刑法学に関心を示さなくなっているからである。

これは政策と選挙の関係に似ている。
どんなに政策(内容)が良くても、選挙で勝たなければ政策は実現できない。
理論も同じで、理論の中身は重要であるが、それを実務家や将来の実務家である受験生が読まなくなれば、その理論は影響力を保てない。

理論的におかしいと指摘されつつも、前田理論が実務に影響があるのは、言うまでもなくその普及度である。前田先生のテキストが改訂されたと聞けば、刑事実務をやっている実務家は必ず買うし、かつ、受験生の多くが購入する。

また、立法への影響も新たに考える必要がある。
会社法の立法を見ていれば分かるように、キャスティングボートを握ることも、1つの課題である。
現在、関西刑法学は立法への影響を全く有していない。共謀罪立法、重罰化いずれも多くの関西刑法学の研究者が反対したにも関わらず、法務当局は何ら耳を貸さなかった。
(むしろ、「酒の場での冗談が共謀罪として問われる」という問題の本質ではない批判の方を、法務当局は受け入れている)

「学者は理論が全て。そんな受験生への妥協とか、立法への影響力など考える必要はない」
というのも1つの答えであろう。
しかし、それでは「トキ」ではないが、絶滅してしまう。絶滅してからでは遅いのである。

※注意。ここで言う「関西刑法学」とは、佐伯→中山→浅田・松宮(敬称略)のラインを言う。大谷刑法学ではない(関西にいると分かるが、大谷刑法学は、理論的には別系統てある)。しかし、「関西刑法学と言えば大谷刑法学」と多くの受験生が思われていいる事態そのものが、関西刑法学の危機なのである。
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by meronpanss | 2006-09-02 17:28
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