電子媒体に対する包括差し押さえ

おなじみのこの判例。

最高裁平成10年5月1日第1小法廷決定LEX/DB28035217(刑事訴訟法百選8版・25事件)
「パソコン,フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許されるものと解される」

判例はこのように言う。しかし、この要件を暗記するだけでは不十分であろう(そもそも、これが一般的要件なのかは疑問の余地がある。現に、調査官はこれは一般的要件とは述べていない点には注意を要する。平成10年度最高裁判所判例解説刑事編87頁参照)。大切なのは、なぜ上記の事情がある場合に、包括差し押さえが認められるか、という点である。

以下の説明が参考になろう。
酒巻匡「令状による捜索・差押え(2)」法学教室294号110頁。
「この判例(平成10年判例-Gak補足)も、一般原則として、捜索・差押えの現場で、捜査機関が被疑事実との関連性の有無を確認することにより、令状に記載された差押え物件に該当すると判断するのを前提としているものと思われる。そのうえで、例外的に確認無しの差押え処分が許容する合理的な説明があり得るかが問題である。
 一つの説明は、被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる以上、包括的に差し押さえられたディスクの全体すべてについて、被疑事実との関連性が認められるのであり、その意味で違法な差し押さえではないと考えるものである。この場合、「関連性」の程度は、一般の差押え処分の場合よりも相当希薄化されたものになろう。
 しかし、内容の確認をしない差押えを許すことは、事実上、被疑事実との関連性がない可能性のある物件の差押え処分をも認めることになり、不合理である。このように捜索の現場で被疑事実との関連性を的確に判断できる状況にない場合においては、関連性のある物件を差し押さえるという処分の目的実現に「必要な処分」といして、対象となりうる物件を一括して関連性の判定に適した最寄りの場所に運搬・移動して検分したうえ、被疑事実との関連性を認められる物件のみを差し押さえた後、その余の物件を元に戻すという措置をとるのが妥当であり、説明としてもより整合的であろう」

なお、電子媒体に対する包括差し押さえについては、理論以外にも、事実との関係も重要である。平成10年判決は、組織的犯罪を裏付けるための捜索・差し押さえという事情があった。事件の背景、重大性、捜索差し押さえの対象も検討する必要があるように思われる。したがって、類似事案との検討では、判例の事案との慎重な対比が求められよう。
[PR]
by meronpanss | 2006-07-06 16:01
<< 星に願いを 男前豆腐店? >>