必要性・緊急性・相当性?

最決S51・3・16刑集30・2・187LEX/DB24005402(百選1事件)
「捜査において強制手段を用いることは、法律の根拠規定がある場合に限り許容されるものである。しかしながら、ここにいう強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものであつて、右の程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合があるといわなければならない。ただ、強制手段にあたらない有形力の行使であつても、何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相当でなく、必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと解すべきである」
→一般に「必要性・緊急性・相当性」の3要件と言われることがあります。

だが、しかし。
次の記述があります。

酒巻匡「捜査に対する法的規律の構造(2)」法学教室284号67頁
「なお、実行され手段・方法・態様そのものの『相当性(いわゆる社会通念上相当かがとうか)』を独立の判断基準として分析も可能と思われるが、裁判所の行う適否の判断過程をできる限り客観的に顕在化することが望ましいという観点からは、ある捜査手段・方法により侵害された法益を出来る限り具体的に析出することにより、これを当該手段を実施する必要性・緊急性の程度との比較衡量に帰着させることが可能であり、『相当性』は合理的権衡が認められるという結論の表示であると位置付け理解しておくのが適切だと思われる」

長沼範良ほか『演習刑事訴訟法』(有斐閣・2005年)58頁〔酒巻匡〕
「『任意』捜査は第一次的には捜査機関限りの判断と裁量で実施できる(197条1項本文)。それが限界を超えたかどうかは、具体的事案の必要性・緊急性と侵害される法益との衡量の結果『相当』かどうかで決まる」

→相当性は結論を示すものであって、要件ではないとの理解です。

要は、任意捜査の限界を判断するにあたっては、
「捜査手法を用いる必要性とそれによって制約される利益とを比較考量し、相当と認められる」(長沼範良『演習刑事訴訟法』(有斐閣・2005年)180頁〔大澤裕〕)
か否かを判断すれば足りるということでしょう。

必要性・緊急性・相当性を3要件と理解すれば
必要性+緊急性+相当性=適法な任意捜査
との判断枠組みとなります。

一方、酒巻教授らの理解によれば、
捜査の必要性・緊急性と制約される権利・利益を比較考量の結果、前者が優越=相当な任意捜査=適法な任意捜査
との判断枠組みとなります。

前掲の昭和51年決定も、あてはめ段階で、相当であったか否かを端的に判断している点からすれば、酒巻教授らの見解は説得力を有すると言えると思われます。

※もちろん、任意捜査の限界を考えるに当たっては、その捜査活動が任意捜査にあたる(強制捜査にあたらない)ことを画定する必要があります。問題となっている捜査活動が強制捜査に該当すれば、比較考量は問題なりません
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by meronpanss | 2006-10-31 23:22
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